【過去問解説】2023年度 東京大学 英語 大問5

【過去問】東京大学

2023年度 東大英語の解説です。

今回は大問5を解説していきます!

「パラグラフリーディング」を使って、「エッセイのテーマ」を理解できるように読み込んでいきます。

  • 解答例だけささっと確認したい人
  • 単語・文法力不足で、そもそも正確に英文が読めない人

にはあまり適さない内容となりますが、逆に

  • 日本語訳はできるけど、なぜか問題が解けない人
  • 長文読解を極めたい人

など、長文読解を得意にしたい場合はぜひ腰を据えて取り組んでみてください!

(そもそも英文の意味がうまく取れないという方は、まずこちらの勉強法をCheckしてみましょう。)

著作権の関係上、問題そのものは載せていません。インターネットで過去問を手に入れてもいいですし、赤本があれば読みづらかった文法箇所も全訳でチェックできるので、そちらを用意してもOKです!

問題は手元に用意してもらえたでしょうか?それでは解説ノートを見ていきましょう。

2023年度 東京大学 英語 大問5

◎大問5のキホンの考え方:扱われているテーマを理解!

この大問は例年「エッセイ」の形をとることが多い。

ある人の経験やエピソードが語られるというものである。

東大問5の素晴らしいところは、そのエッセイが毎回必ず1つの社会性のあるテーマに絡んでいるという点。読みながらそのテーマと問題提起を見つけることができれば、1番最後の「本文内容に即した選択肢を選ぶ問題」も即座に解答可能だ。

逆に、論文と違うのは「いくつも論点が述べられるというわけではない」ところ。論文の場合であれば、1つ1つの段落を丁寧にパラグラフリーディングし、論点や根拠となる展開を1つも見逃さないようにしなくてはならない。

一方で、エッセイは作者や主人公個人の思いが書かれたもの。いろいろな経験は書かれているかもしれないが、基本的に「言いたいことは1つ」と思っていてよい。

ただし、記述問題や穴埋め問題の解答の根拠となるような細かい問題は読み落とすことはできない。

なので、普段よりは少しざっくりと、パラグラフリーディングをしていく必要がある。

第1段落

この段落で押さえたい内容は、「主人公」「舞台」、そして「場面設定」3つのみ

  • 主人公: Ruth Wilson Gilmore
  • 舞台:environmental justiceについてのとあるカンファレンス
  • 場面設定:教授であるGilmoreが、上記の会議でゲスト登壇者として話をしようとしている

ここから、主人公についての「どんなエピソードが語られるか」を考えながら読み進めていけばOK。

Gilmore自身については、同格カンマの2つめの情報である「the prison-abolition movement」という単語が気になるには気になる。「(名)abolition」や「(動)abolish」から意味を連想できそうであれば少し内容を考えてみてもいいが、後の段落でより具体的な説明がなされるので、この時点では意味をとる必要は特になし

設問では、空所アが2つある。

– (26)はhazardsを修飾する関係代名詞節の他動詞として「faced」

– (27)は「talk about」の目的語としての名詞「worries」

をそれぞれ入れればOK。

第2段落

この段落も、引き続き「場面設定」を知ろう。

ゲスト登壇のトークの準備をしていたGilmoreが、子どもたちと話すことになる場面。特に、子どもたちがGilmoreについて抱いている印象を理解しておきたい。

  • distrust adults
  • frowning
  • against her

などのマイナスワードの情報がどれか1つでもイメージできればOK。とにかく「子供たちがGilmoreに対して不信感を持っていること」を読み取ろう。

空所アは、まさにそのような態度の人間がどういう姿勢をとるかを考えればOK。そして前置詞「with」を見たら、「付帯状況のwith」は必ず一度は疑いたい(名詞の後ろに形容詞や人・モノの「状態」「位置」「説明」を表す言葉が来ていないかチェック)。すると、「with one’s arms crossed」で「腕を組んだ状態で」の意味となる。直前の「with one’s shoulders up(肩をすくめた状態で)」とともに、必ず意味が取れるようにしておくこと。

第3段落

初対面の子供たちに不信感を向けられた主人公の、当然の反応としての困惑が描かれている。

第4段落

ここでまた「a prison abolitionist」の単語が登場した。いよいよここから、このテーマに沿ったエピソードが書かれそうだ。

まず、子どもたちがGilmoreに不信感を抱いている理由、「彼女がprison abolitionistであること」だと判明する。

先ほど「abolition」や「abolish」の意味からすぐに内容が想像できなくてもOKとしたが、これはなぜなら、直後の台詞で「prison abolition」の簡易な説明がなされるからだ。要は「to close prisons」、「刑務所を廃止すること」を支持している人間なのだ。

第5段落

子どもの台詞に続き、Gilmore自身も、自分が「刑務所廃止論者」であることを平易な表現で認めている。

第6段落

「でも、なぜ?」。子供たちは問う。

これは、おそらく読者である我々も感じたいことだ。「刑務所廃止論」は、少なくとも我が国においては頻繁に議論されているとは言えない考え方であり、読み手の背景知識は乏しいのが当然だ。

そこで、長文読解としてもここからは「彼女がそのような考え方を支持している理由は何か」を正しく読み取っていく必要があるだろう。

第7段落

子どもたちとGilmoreは意見が対立している。彼らはそう簡単には「persuaded(説得され)」はしないだろう。

ここで、空所イがある。副詞節をつくる接続詞「whether」を消してしまえば、主節の主語は「these children」であるから、空欄には子供たちの現状を正しく説明した語句が入ればよい。

もちろん語の意味から一発で入れてもいいし、もし消去法を行うなら、以下の考え方となる。

空所のあとに続くのは「of the world」なので、「『世界の( )』を理解している」に入るのは、当然マイナスな意味の単語である。すると、「happiness」「richness」は消え、あとはそれぞれの形容詞「expensive」「mysterious」「tired」の意味を考えて文脈から消していき、最後に残った「harshness」を選ぼう。

第8段落

この段落では、下線部(A)の並べ替えがあり、これがやや難問だ。

並べ替えを正しく行うためには、まずどんな内容の文章が入るべきかを考えるとよい。

そこで注目したいのは「instead of asking whether~」の部分と、「in the first place」である。Gilmoreの問題提起としては「『罪人を刑務所に入れるべきか』を考えるよりも、そもそも先に考えるべきことがあるのではないか?」ということなので、下線部にはもっと根源的な内容が来うるというわけだ。

さらに、ここで英文の特性を利用できる

英語では「概念的な内容」や「あいまいな内容」「作者が意味付けを行っている内容」の場合、直後にその内容を平易に細くした文章が付け加えられることが多い。

なので、今回も「根源的な問い」のあとに補足的な内容が来ているか、見ておこう。

すると、「to allow cruelty and punishment」という内容が見て取れる。

つまり、彼女の問いの内容(=下線部の内容)としては、「暴力などで法を犯した人間を、なぜ私たちが同じ暴力という手段で罰するのか?」となるはずだ。これで下線部の内容が考えられたので、いよいよ並べ替え本番に移っていく。

並べ替えの方法としては、意味のつながりを持ったカタマリをいくつか作っていき、最後にそれぞれのカタマリをつなげる、というテクニックが有効だ。

すると、今回の場合は以下のカタマリが見えてくる。

  • we solve problems
  • by repeating
  • the kind of behavior
  • that brought us

これを上からつなげていくと、下線部(A)の解答となり、また「なぜ我々はその問題をもたらした行為を繰り返すことで問題を解決しようとするのか」という、「暴力で暴力を罰することへの疑問」として適切な内容にすることができる。

このあたりから、Gilmoreが刑務所廃止論を支持する理由も少しずつ見えてくる。

第9段落

子どもたちの態度は依然として敵対的なままだが、Gilmoreはこの段落で1つの具体例を出す。それが「スペインの事例」だ。ここは正しく理解したい。

・スペインでは、殺人罪の刑期は平均「7年」である

Gilmoreがなぜこの例を出したのかしっかり頭を使って考えたい。読み手として、上記を見たとき、「たったの7年?」と思えただろうか?

第10段落

もちろん、これを聞いた子どもたちも同じ反応をする。

下線部Bの記述は、「such~+that…構文」+その直後にある「怒りの対象の変化」の箇所をしっかり読み取って書いていきたい。

まず、「なぜ」に当たるのが「such」の部分である。そして、「どのように変化」の部分が、「outraged」の対象の部分である。すると、以下のような解答が作成できる。

「子供たちはスペインの殺人罪の刑期の短さを聞いて驚いたあまり、その事実に対して怒り出し、Gilmoreの刑務所廃止論への怒りは少し弱まった」

第11段落

この段落では、Gilmoreの考えのコアが示される。やや長いが、Gilmoreがスペインの事例から伝えたいことを常に考えながら読み進めていく必要がある。

Gilmoreが話した内容によると、スペイン流の考え方では、7年という刑期は「その人がしてしまったことを考えるため」、「釈放後にどのように生きるかを考えるため」にあり、「その人物を罰するため」にあるわけではないという

それが、「where life is precious, life is precious」という、シンプルだが意味ありげな一文で示される。

これはおそらくGilmoreやスペインの人にとって非常に重要な考え方だ。ただ、これだけではやや抽象的な表現なので、さらに続きで内容の補足がなされるはず、と思って丁寧に読み進める。

「Which is to say,」からの一文は長いが、この箇所こそが先ほどの「where life is~」をより具体的に説明した内容になるので、正しく読み取っていくこと。「enough~that…構文」が落ち着いて処理できれば問題ない。

ここで示されるのは、「『命は価値のあるもの』であり『暴力的で、人生を壊すような手段』は犯罪者に対しても、問題解決に対しても用いない」という考え方である。

第12段落

これを聞いて、子どもたちは納得しただろうか?

その部分については空所になっているため、まずその先の「but it was difficult to persuade」から読む。どうやら結局、子どもたちを説得することは、難しかったらしい。

当然ア(29)には「doubt」が、ア(30)には「thought」が入る。子どもたちの考えを覆せなかったと感じているわけだから、ア(31)には「defeated」が入る。

第13段落

この段落で、展開が動く。それは、「to Gilmore’s surprise」にあるように、Gilmoreにとって予期せぬことが起こったからだ。

ここで思い出してほしいのが、英語の「新情報」の読み取り方だ。

新情報については、「【過去問解説】2024年度 東京大学 英語 大問1 (A)」で詳しく解説しているが、端的に言えば、新情報は「いつも必ず最後に来て」「読み手を驚かせるために」存在している。

今段落の一番最後を見てみよう。「prisons」という単語が末尾に来ている。一見さっきまで話していた内容の続きで、特に目新しいことはないように思うが…、実はこれは「子供たちのプレゼン発表」の中で何が話されたかについて述べている文章なのだ。

つまり、先ほどまであれほど「刑務所は必要!罪人は徹底的に罰すべき!」と頑なに態度を変えなかった子供たちが、環境ハザードの1つとして「刑務所」を挙げたのである。

Gilmoreとの議論は、完全に無意味という訳ではなかったようだ。

第14段落

Gilmoreの心情が下線部Cに表れている。「Why?」で理由が述べられているので、そこをしっかり読み取ってから下線部の記述に入っていこう。

「Gilmoreが予想していたこと」と、「子どもたちがどのようにその予想を裏切ったか」は、「But」の前後を読み解けばOK。

  • Gilmoreは、他の場所で起きていることは彼ら自身の生活には関係ないことだと子どもたちが考えると思っていた
  • 子どもたちはGilmoreの伝えたい論点を理解し、自分たち自身の問題として考えた

下線部Cの解答としては、上記の1点目を「~から。」の形で記載すればOK。

そして、再び「where life is~」の文言が出てきたことに、気づいただろうか。やはりこれはGilmoreの話を通しての大きなテーマであったことが理解できる。この言葉の意味を考えれば、問(ウ)の答えも正しく選べるはずだ。親切にも、先ほど読み取ったこととそのまま同じ単語が使われている。もしこの言葉の意味を忘れてしまっていたら第11段落の解説まで戻ろう。

これで今回の解説は終了となる。

ここまでじっくり読み込んでくれてありがとう。2024年度の解説もあるので、こちらもチェックしてもらえると非常に嬉しい。

長文読解の考え方は、どうしても一度解説を読んで理解しただけで体得できるものではない。このページをブックマークやホーム画面に追加して、何度も読み込み復習してもらえれば、と思う。

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