【過去問解説】2024年度 東京大学 英語 大問5

【過去問】東京大学

2024年度 東大英語の解説です。

今回は大問5を解説していきます!

「パラグラフリーディング」を使って、「エッセイのテーマ」を理解できるように読み込んでいきます。

  • 解答例だけささっと確認したい人
  • 単語・文法力不足で、そもそも正確に英文が読めない人

にはあまり適さない内容となりますが、逆に

  • 日本語訳はできるけど、なぜか問題が解けない人
  • 長文読解を極めたい人

など、長文読解を得意にしたい場合はぜひ腰を据えて取り組んでみてください!

(そもそも英文の意味がうまく取れないという方は、まずこちらの勉強法をCheckしてみましょう。)

著作権の関係上、問題そのものは載せていません。インターネットで過去問を手に入れてもいいですし、赤本があれば読みづらかった文法箇所も全訳でチェックできるので、そちらを用意してもOKです!

問題は手元に用意してもらえたでしょうか?それでは解説ノートを見ていきましょう。

2024年度 東京大学 英語 大問5

◎大問5のキホンの考え方扱われているテーマを理解!

この大問は例年「エッセイ」の形をとることが多い。

ある人の経験などが、その人自身の視点から語られるというものである。

しかし、東大問5の素晴らしいところは、そのエッセイが毎回必ず1つの社会性のあるテーマに絡んでいるという点。読みながらそのテーマと問題提起を見つけることができれば、1番最後の「本文内容に即した選択肢を選ぶ問題」も即座に解答可能だ。

逆に、論文と違うのは「いくつも論点が述べられるというわけではない」ところ。通常論文の場合であれば、1つ1つの段落を丁寧にパラグラフリーディングし、論点や根拠となる展開を1つも見逃さないようにしなくてはならない。

一方で、エッセイは作者個人の思いが書かれたもの。いろいろな経験は書かれているかもしれないが、基本的に「言いたいことは1つ」と思っていてよい。

ただし、記述問題や穴埋め問題の解答の根拠となるような細かい問題は読み落とすことはできない。なので、普段よりは少しざっくりと、パラグラフリーディングをしていく必要がある。

第1段落

この段落で押さえたい内容は、3つ。

  1. 主人公である筆者は歩くことが好き
  2. 筆者は子供時代、家にいたくなかった
  3. 毎日遅くまで外で過ごし、夜道を歩いて家に帰った

これが読み取れたら、次の段落に進もう。

第2段落

この段落では、ジャマイカでの子供時代が語られる。

家に寄り付きたくなかった主人公が、夜道を歩くことで街頭にいる人々と親しくなっていく様子が語られる。

その中で夜道を安全に歩く知恵も獲得し、そこでは「I could be myself without fear」と感じるまでになった。

「be oneself」というのは、「自分自身でいる、自分自身になる」、つまり「自分らしくふるまうことができる」状態を意味する表現だ。

空所ア(26)は単純な語法問題だ。(  )friends withに入るのはもちろん「make」。

そして下線部(A)。単純なSVCだが、ここまでの話を整理して「home」の意味を決めたい。

主語の「the way home」はもちろん、「自宅に帰る道」のこと。

そして、夜道で街角の人々と仲良くなった筆者は、その帰り道こそを「安心して自分らしくいられる家のような居場所」であると感じ始めたのである。これが2つ目の「home」の意味。

解答はこれをまとめればOKだ。

「自宅に帰る道が、安心して自分らしくいられる居場所になったこと。」

第3段落

引き続き同時代の話となるので、前の段落とまったく同じ流れで読んでいけばよい。

主人公は夜道を歩くのが得意だったはずなので、空所ア「(  )myself on ~ing」の箇所は「prided」を入れよう。

第4段落

ここから話が展開する。大学生となった主人公がジャマイカを出たために、舞台がアメリカのニューオリンズに変わる。

第5段落

ここから少し雲行きが怪しくなる。

新天地であるニューオリンズで早速歩くことを始めた主人公は、警官に止められ、空所ア箇所(「they(  )me to restrict walking」)で、大好きな「歩くこと」をあまりしないようにと言われてしまうのだ(もちろん空欄の答えは「advised」)。

その理由は「犯罪率(crime rate)が高いから」

しかし、ジャマイカという犯罪率のはるかに高い土地でも安全に歩く知恵を持っていた主人公は、「アメリカの犯罪者なんてたいしたことない」と考え、警察の助言に従うことはせず、歩くことをやめなかった。

本当に、それで何も問題は起きなかっただろうか?

最後に「They’re ~ threat to me.」という文章で段落は終わっていることからも、実際にアメリカ人犯罪者は主人公にとって脅威にはならなかった

ならば、警官の言っていた「脅威」とは何のことだったのだろうか?

第6段落

下線部(B)を含む文章のみで、段落が構成されている。

ここは、前段の最後の問いに答える形で、意外な情報を入れなければいけない。

もし、「ジャマイカ人」「ニューオリンズ」「警官」「犯罪」など、これまでのキーワードから内容が予測できるようであれば、すぐ並べ替えに移って構わないと思うが、背景知識がなく、前段の問いへの答えがまったく浮かばないということであれば、ここはいったんさっさと次の第7段落に進むべきだ

第7段落

警官の忠告通りせず、大好きな歩きをやめなかった主人公は、数日のうちにあることに気付いた。

「many people ~ seemed afraid of me」である。

これだけ読んでも、先ほどスキップした並べ替え部分の察しがつく。つまり、警官が意図していたのは「アメリカ人が犯罪者として主人公に脅威を与える」ことではない。むしろ「主人公が、アメリカ人に脅威として見られる対象である」ことを意味する内容が来なくてはならない。

「(What no one) had told me was that I was the one (who would~)」

また、同時に冒頭で述べた「エッセイの社会的テーマ」にもこの段階で気付きたい。今回のテーマはもちろん「人種差別」だ。

テーマが判明すると、ここからは一気に読みやすくなる。ゆえに、リーディングのほうも一気にスピードアップしていきたい。

第8段落

この段落を読むうえで背景知識としてぜひ知っておいてほしいのが、「レイシャルプロファイリング(racial profiling)」という警察の慣行だ。

肌の色や顔の特徴から、街を歩いている人物が外国人と見るや否や、警察はその人物に声をかけ、職務質問なり、身分証の提示を求めるなりをするのである。これは人種差別的な行いであるとして、世界各国で問題になっている。アメリカでも、まったく罪のない黒人男性が取り囲んだ警官に突然発砲されて殺される悲劇が起きたりしている。

ちなみに、このノートを書いているわたらせの知人の在日アメリカ人女性も、しばしば警官に止められてカードの提示を求められたことがあると激怒していた。白人女性ですらそれくらいぶしつけな扱いを受けるのだから、有色人種の人々が日常的に受ける精神的苦痛は計り知れない。

さて、話は元に戻り、第8段落だ。

この段落で設問に関わる箇所は空所アのみである。

空所アは、警官とのやりとりが書かれているので、先ほどのレイシャルプロファイリングの概要を思い出せばよい。また、カンマ以降の分詞構文「asking questions~」の内容から推測してもOK。

答えはもちろん「bullied」が入る。

「bully」は「(動)いじめる」「(名)いじめっ子」という意味の単語だが、もし知らない場合には必ず覚えておくこと。

第9段落

空所や下線部はないが、実は設問(C)の内容部分である。

アメリカへ移住して以来、道行く人から警戒されてしまったり、警官からひどい扱いを受けたりしていた主人公であるが、ここでまた新しい内容が出てくる。「survival tactics」を身に着け、少しでも歩く際の快適さを得ようとする姿が描かれるのだ。

ここでは、2つの「survival tactics」を読み取りたい。これが設問(C)の直接的な答えとなる。

  • 白人女性が前から歩いてきたら、彼女をおびえさせないために道路を渡って反対側を歩く
  • たとえ忘れ物をしたことに気付いても、後ろから歩いてくる人を驚かさないために、突然振り返らない

このように、「白人住民の安全を脅かさない」ために最大限の気を遣い始めた主人公だったが、当然毎日こんな状態で歩いていては、自分の居心地がいいはずもない。

それが、段落終盤の「New Orleans suddenly felt more dangerous than Jamaica.」という一文にも表れている。

第10段落

そのようにしてニューオリンズで肩身の狭い思いをしながら過ごしていた主人公は、その後ニューヨークへと移り住む。そこで知り合った彼女と2人でニューヨーク市内を歩き回り、主人公は素晴らしい経験や楽しい思いもする。

だが、空所イを含む文章は、逆説「But」から始まっている。

彼女と2人で市街地を歩いていれば、周りの人も主人公たちが「デートを楽しんでいる最中だ」とわかるだろう。だが、例えば主人公ひとりぼっちで道を歩いていたら、周りの見る目はどうなるだろうか?

田舎と都会という違いこそあれ、同じアメリカという国の話だ。やはり、ニューオリンズと同じで「黒人の存在=脅威」とみなされることも、当然あるだろう。

空所イを含む文章は、ニューヨークに来てもまだ周りの視線や否定的な反応から逃れられない主人公の状態を示す内容となる。否定の「not」はすでに入っているので、空所イには「その逆の意味の(=ポジティブな状態を表す)単語」を入れればよい。

「afraid」や「guilty」、「unprepared」は否定的な意味の単語なので、この時点ですでに候補から外れている。

すると「vulnerable」の対義語である「invulnerable」が見つかる。「vulnerable」は「傷つきやすい、無防備で影響などを受けやすい」という意味があるから、打消しの接頭辞「in-」がついている「invulnerable」は、まったく傷つけられることのない「無敵」の状態とでも言おうか。

当然、主人公は無敵の状態では「ない」わけだから、否定「not」と合わせれば正しい意味となる。よって空所イはこの「invulnerable」を選ぼう。

第11段落

前段落が「ニューヨークでも傷つけられないわけではないとわかった」という文で締められていることからも、その具体例として実際にニューヨークで起こった嫌な出来事が語られる。

道を歩いていたら、突然白人男性に肩を殴られたのだ。

空所ア「what he(  )」は、「imagined」を入れて「彼が思っていたものではなかった」という意味にしたい。

また最後の下線部(C)では、ニューオリンズと同じように気を遣って歩くようにせざるをえなくなった結末が書かれている。もちろん、「the old rules」の内容は第9段落を指す。

第12段落

まとめとして、主人公の思いが語られている段落だ。空所はアしかないし、ここは残った選択肢の「stopped」を入れればよい。

ただ、ここが正しく読めていると設問(ウ)が理解しやすくなる。

この段落では、主人公にとって「家」「歩くこと」がどんなことを意味するのかが書かれている。ジャマイカ時代に主人公がこれらについて感じていたことを思い出せば、この段階でなぜもう一度そのような概念が説明されるのか、読み取ることができるだろう。

「歩くこと」「自分らしくいられること」は、人として誰もが当たり前に持っている権利だ。だが、それらが自由にできないのが、今の主人公たちが置かれている状況なのである。

すると、設問(ウ)で選ぶべき選択肢は1つだ。

b)「恐怖や不安を感じることなく街中を歩けることは、主人公にとっては非常に重要な自由の源だ。」

これですべての設問を解き終えた。

この大問5は例年、読み手に「今も誰かが直面しているかもしれない問題」を考えさせるような良質な英文が選ばれていることが多い。繰り返しにはなるが、長文読解としてはその「テーマ」「筆者の伝えたい思い」をぜひとも理解していきたい。

今回もここまでじっくり読み込んでくれてありがとう。大問1の解説や、前年度の解説もあるので、こちらもチェックしてもらえたら嬉しい。

長文読解の考え方は、どうしても一度解説を読んで理解しただけで体得できるものではない。このページをブックマークやホーム画面に追加して、何度も読み込み復習してもらえれば、と思う。

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